鹿の国
映画『鹿の国』は、2025年1月2日に公開された日本のドキュメンタリー作品で、長野県諏訪地方に位置する日本最古の神社の一つである諏訪大社を舞台に、その四季折々の祭礼、特に鹿が重要な役割を果たす儀式に焦点を当てています。監督はネパールやチベットで生と死の文化を追ってきた弘理子が務め、諏訪の古代史を探求してきた北村皆雄がプロデュースを担当しました。
🎬 作品情報
- タイトル:鹿の国
- 公開日:2025年1月2日
- 監督:弘理子
- プロデューサー:北村皆雄
- 語り:能登麻美子、いとうせいこう
- 音楽:原摩利彦
- 出演:中西レモン、吉松章、諏訪の衆
- 上映時間:98分
- 製作・配給:ヴィジュアルフォークロア
- 公式サイト:https://shikanokuni.vfo.co.jp/
ストーリー概要
本作は、諏訪大社で今も執り行われている鹿の生首を捧げる儀式を追ったドキュメンタリー映画です。諏訪大社は上社(本宮・前宮)と下社(春宮・秋宮)の四社からなり、その創建は古事記の時代にまで遡るとされる日本最古級の神社です。自然そのものをご神体とする古来の信仰形態を色濃く残しており、特に7年目ごとに行われる御柱祭で広く知られていますが、本作では年間を通じて行われる他の多くの特異な神事に光を当てています。
映画は、諏訪大社の数ある祭礼の中でも、特に狩猟文化の痕跡を強く残すものに注目しています。春に行われる御頭祭では、かつては75頭もの鹿の生首が捧げられたと伝えられています。現在は剥製が用いられますが、鹿が贄(にえ)として重要な役割を担う神事であり、狩猟と豊穣予祝が結びついた諏訪信仰の特色を示しています。狩猟で得た命を神に捧げ、食すという行為を通じて、命の循環と自然への感謝を表す古代からの信仰が垣間見えます。
また、中世に途絶えたとされる秘儀的な神事「御室神事」の再現も本作の見どころです。冬の約3ヶ月間、「大祝(おおほうり)」と呼ばれる少年(生き神)が、「御室」と呼ばれる竪穴式の穴倉に籠り、神霊「ミシャグジ」を降ろすとされます。春になると「稲魂(いなだま)」として地上に戻ってくるというこの神事は、「再生」の儀礼としての側面を持ちます。冬の死(籠り)から春の生(再生)への移行を描き、生命の循環を直接的に表現しています。
主な登場人物・キャスト
- 中西レモン:民俗芸能研究者として、諏訪の祭礼や信仰について解説。
- 吉松章:諏訪の地元住民として、祭礼に参加し、地域の伝統を継承。
- 諏訪の衆:諏訪地方の人々が出演し、祭礼や神事の再現に協力。
見どころ
- 映像美と雰囲気:諏訪の四季折々の自然風景や神事を捉えた映像の美しさ、神秘性が高く評価されています。
- 文化・信仰への洞察:普段知ることのできない諏訪大社の神事や、地域の人々の信仰に基づいた生活様式を垣間見ることができます。
- 御室神事の再現:中世で途絶え、謎に包まれていた「御室神事」の一部を再現した試みは、本作のハイライトの一つとして注目されています。
- 淡々とした描写:鹿の狩猟シーンなど、衝撃的な場面も含めて、ヒステリックなプロパガンダに陥らず、淡々としたドキュメンタリータッチで描いています。